愛車の板金塗装の前に!上手い工場を探すコツ【入門編】

工場選定

「あっ!擦っちゃった・・・いつも慎重に運転していたのに・・・ガッカリ・・・ このキズ、どうしよう、どこで直せるんだろう・・・」

「あーあ、ぶつけちゃった・・・誰もケガしなくて良かったけれど、このおおきな凹みは修理できるのかな・・・、新車だからきれいに直したいな!」

「ディーラー?カーショップ?そういえば近くに修理工場があったかも?」

 

車のキズにガッカリ・・・みっともないから直したいけれど、はじめての板金塗装修理だと、どこにどのように頼んだら良いか、良くわからないですよね?

大事な愛車の板金塗装修理を、どのような工場やお店に頼めば良いのか?上手い工場の探し方や依頼のコツをお伝えします。

この記事が、愛車がきれいによみがえる一助となれば幸いです。

車の鈑金塗装修理の2大工程

車の板金塗装修理は、字の通り「①板金」と「②塗装」の大きく2つの工程になります。

工場によっては、メカニックも「板金」担当と「塗装」担当に分かれていることもあるくらい、全く違う技術が必要な作業です。

 

【板金作業】

車のボディーの凹んだ部分を、元の形状に戻します。

(1)状態確認

キズや損傷の状態を正確に把握します。

(2)成形

 

 

 

 

 

車のボディーの凹んだ部分を、特殊な専用工具を使って、元の形状に徐々に戻していきます。

(3)パテ埋め

 

 

 

 

変形して薄くなった部分には、紙粘土のような溶剤の「パテ」で足りない部分を埋めて、元の形を再現します。

(4)研磨

最後に、複数の種類の機械で研磨して、キズや凹みのないきれいな状態にします。

 

パーツ交換

損傷の部位によっては、部品をそっくり外して、新しいパーツに交換する場合もあります。

納期は短くなりますが、料金合計は高くなります。

(パーツ代金が上乗せ、上記工程(2)~(4)が簡素になり板金工賃が少し下がる。)

 

【塗装作業】

キズ凹みを元の形状に修復したボディーに、色を塗る作業です。

(1)調色

 

 

 

 

車の色の塗料を、複数の塗料を混ぜてつくります。新車として製造された時期や、その後の日焼け等により微妙に色が違うので、修理する車に合う色をつくります。

(2)マスキング

塗装する場所以外の車の全ての箇所を特殊な紙で覆って、塗りたい以外の場所に塗料がつかないようにします。

(3)予備塗装

 

 

 

 

ボディーの錆防止と、塗装がよりボディーになじみやすくなるように、サーフェーサーという溶剤を、先に吹き付けます。

(4)塗装

 

 

 

 

 

 

車のボディーに、塗装専用のスプレーガンという道具を使い、調色した塗料を見に見えないほど細かくしてボディに吹き付けます。

吹き付ける場所は、塗装ブースという車1台がそっくり入る大きな箱の中で行います。

(5)ぼかし

周辺部との違和感が生まれないように、グラデーションを入れます。

車の塗装は、必ず経年変化しています。修理しない部分と修理した部分のわずかな色の差を、人の目で見て違和感を感じないようにします。

(6)クリア塗装

塗装は、最低でも4層、さらに複雑な色は5~6層以上の塗装を行います。最も外側に必ず透明な「クリア層」を塗装して、塗装全体を保護します。

(7)乾燥

 

 

 

 

 

 

塗装ブースの中に車だけを入れて、温風を送り数十分をかけて、塗装面を乾燥させます。

(8)磨き

乾燥後は塗装面は堅くなります。

乾燥工程でついたわずかなチリや埃を、ポリッシャーという工具等を使い磨いて仕上げます。

塗装表面をより滑らかにすることにより、艶が出ます。

(9)最終確認

外観を確認して完成です。

 

ところで、板金だけで塗装修理をしなくても大丈夫なキズ、塗装だけで板金修理をしなくても大丈夫なキズはあるの?

絶対にないとは言い切れませんが、ほとんどの場合は、両方の修理作業が必要です。

キズは、一見すると凹みがないように見えても、そのキズができたときにボディへ圧力がかかりわずかなゆがみとなっていることがほとんどです。変形しているボディーにきれいな塗装だけをしてしまうと、きれいに仕上がった分、修理前には気づかなかった「ゆがみ」が見えやすくなりかえって目立ってしまう可能性が高いです。

逆に板金だけの修理も同様です。板金は1つの工程ではなく多くの工程の組み合わせになるので、その修理過程の間で、元々の塗装にも影響が出ることは避けられません。

なので、「板金だけ」「塗装だけ」ではなく「板金塗装」の修理となります。

 

板金塗装修理の工程は10以上!実車を見てみよう!

車がぶつかった場合に、どのようになってどのように修理するかを見ていきましょう!

恥ずかしながら筆者の愛車です。自宅駐車場前の電信柱にぶつけました。

今の車は、事故の際に車のボディーがクッションのように衝撃を吸収して、運転者や周りのものや歩行者を守ります。

この事故も、車のボディのダメージは大きく、運転者や周りのものはダメージは少なかったです。

 

①キズ・凹みの詳細な確認

1つの方向からではなく全ての方向から確認をします。痛々しい姿ですね・・・

右側後ろのバンパーからライトにかけての損傷です。

②部品を外す

バンパーやライトを外していきながら、ボディ以外の部品の損傷の有無を確認します。

右テールランプ下側が内側に食い込んでいます。バンパーを外すと内部損傷もわかります。

パネルが変形してつなぎ目が剥離して、シーリング(部品と部品の隙間を埋める溶剤)が割れています。

 

ボンネット部以外にも、車の内部には、多くの機械が入っています。  

 

③叩き・引き出し

真後ろからも、真横からも引きます。 

 

④パテ成型、研磨・磨き

白っぽい部分が、パテで埋めて成型した部分です。

⑤マスキング

塗装が必要ない部分を覆います。

⑥予備塗装

サーフェーサーを塗布して、マスキングをはがしたところです。

⑦調色

調色室で調色をします。専用ソフトや計量装置を使いながら行います。

⑧塗装

塗装ブース内で塗装中の様子です。

⑨乾燥

⑩部品の取付

バンパーを交換しました。後方コーナーセンサーがついていました。

新品バンパーはオプション対応はないので、センサーを付けられるように穴あけ加工を行いました。

⑪最終確認

全くキズも凹みもありません。普通の人(板金塗装業や車査定に携わっている人が注意しながら調べる以外)には、全くぶつけたということはわかりません。

品質に差がでるのはこういった理由⁉

フロントの事前診断

フロント担当が、どれだけキズや凹みといった損傷具合を正確に把握するか、外側から外側から見える部分だけでなく、中も確認して修理判断ができるか、重要な要素です。

 

見積もりの仕組みの有無

PCの板金塗装見積ソフトウェアを使っている工場もあれば、そうでない工場もあります。見積ソフトウェアも様々な種類があり、さらに最新車両のデータの更新をクラウド経由で短い間隔で更新しているものも、1年~数年に1度しか更新しないものもあります。

 

メカニックのうまさ

もちろんあります。板金が上手いメカニック、塗装が上手いメカニック、分野によっても違います。

 

脱着しした際の中の様子の確認とお客様とのコミュニケーション

ボンネット以外にボディの各箇所には多くの機能部品が配置されています。例えば、サイドエアバッグや後席用エアコンなどです。

パーツを外してみて、初めて中の部品の損傷がわかることも多々あります。

「戻してくれれば良いから、外して中を確認してもいいよ。」と言っても、フロント担当がすぐできる訳ではありません。

メカニック担当であったとしても、ボディーより外したことにより、変形したパーツがかろうじてボディーに支えられていた部分が、1度外してしまったら変形が進んでしまい元に戻せなくなる可能性も高いので、見積のためだけに、パーツを外すことはできません。

そのような可能性も含めて、伝えてくれて提案してくれる工場かどうか。修理を依頼した後に、パーツを外しながら細部まで点検し異常を発見し、報告してくれて修理方針(どれくらいの期間と費用をかけるか)を提案してくれる担当者がいることは、結果として満足のいく品質になるかどうかに関係します。

 

工場の設備や作業環境

塗装ブースの有無や性能や大きさです。

満足できる「板金塗装修理」は、よりそっての提案!

 ~ フロント・メカニックの人に聞いてみた! ~

猪股店長

カーコンビニ倶楽部 山形北町店の店長。フロント業務を担当。長年、メカニックとして板金塗装作業に従事。整備士資格も保有し、整備作業にも携わる。

 

 

 

 

大澤さん (シャイなので、顔だしNGで😊)

同店でフロント業務を担当。中古車の仕入と販売・車の保険も担当。

 

 

 

 

 

車業界で幅広い経験をもつお二人に、著者がインタビューを行いました。

 

Q1)はじめて擦ってしまった、傷へこみ、車のことはあまりくわしくない、どこにどのように頼んだら良いかわからない、そんな人はどのようにしたら良いでしょうか?

 

(猪股)

A)まずは、いくつかの板金塗装工場か店舗をまわるのをお勧めします。実際に見積もりを出してもらい。できれば説明もしてもらいましょう。

 すぐ見積もりが出ないところは、例えば、整備は得意だが板金塗装はあまり得意でないとか、自社ではやっていなくて外注かもしれません。だからすぐには出せないのかも。

 ディーラーやカーショップは、板金塗装は外注しているところが意外と多いものです。

 

(大澤)

A)同感ですね。板金塗装修理は概して決して安い値段ではないので、できるだけ複数の店舗や修理工場をまわってみたらよいでしょう。

 「今決めてくれたら」と迫ってくる工場もあれば、「いろいろまわってみて他社の話も聞いたうえで、また来てください」というところもあるでしょう。お客様自身が、何となくでも感じた「親切かどうか」の印象も、実は大切かもしれません。

 

(筆者)

おふたりとも、似た回答ですね。

「実際に足を運んで聞いてみる」のが良い、ということですね。

 

Q2)普段はどのようなことを大切にして、お客様に接していますか?

 

(猪股)

A)安くて早くて仕上がりが上手いのがもちろん望ましいですが、全てパーフェクトは難しいことも多いです。話をお聞きしながら、品質/納期/価格のバランスを考えて提案します。

①仕事で使う車。それも冷凍車や個人タクシーなど、代車やレンタカーがすぐには準備できないとか、空港などセキュリティ面で入庫できる車が限定されていて代車登録には申請に数日かかってしまう、など、急ぎで1日でも早く修理したい。

 この場合は納期を最重要にします。

②車を使う期間があとわずか。数か月後に免許を返納するとか、次回の車検は通さずに車の廃車と買替を検討している。

 この場合は、仕上がりよりも価格を優先される場合が多いです。

 

③小キズやあまり目立たないキズで機能に問題がない(ライト不点灯とかがない)場合。パーツ交換が必要な場合は、新車パーツを使わずに中古パーツを使うことにより価格を抑えて修理できる場合があります。

 この場合は、修理開始までの期間をもらいながら価格を抑える提案を行います。

 

(大澤)

A)保険修理の意向もお聞きしながら複数の提案を心がけます。もし保険修理を検討されている場合、保険料が次回の更新時に上がることも加味して、保険修理とするケースとそうでないケースの説明をすることがあります。

 損傷が大きく内部も含めて複数か所にわたっている場合などは、メカニックも交えて一緒に修理方針についてお客様と相談しながら提案することもあります。

 

(猪股)

A)板金塗装修理は、過去のケースと「全く同じ」というのはありえず、常にどのような修理も「初めてのケース」なので、毎回の見積もり作成を慎重に行い、車に詳しくないお客様にもわかっていただけるように、専門用語をわかりやすく言い換えながら説明するのを心がけています。

 

(大澤)

A)私は、お客様のご意向を自分で決めつけないようにすること、複数の見積もりを提案すること、を意識しています。

 

(著者)

お客様本位の工場が良いということですね。

 

Q3)最後に、板金塗装修理する工場を探している方へアドバイスをお願いします。

 

(猪股)

A)気軽に寄れる、気軽に聞ける、ということが、最終的に納得のいく修理につながる気がしています。

 丁寧に説明してくれる工場が良いと思います。

 

(大澤)

A)話を聞いてくれて、幅広く相談にのってくれる工場、深い知識があってその知識を元に、選べる提案してくれるところがおすすめです。

 いくつかのお店をまわってみると、差が出ると思いますよ。

 

(著者)

 なるほど、ありがとうございました。

 

今の車はセンサーがいっぱい、安全に車に乗り続けるための注意点

エーミング対応できる板金塗装工場がお勧め!

板金塗装作業をしたら、多くの場合はエーミングが必要です!

エーミングとは、最新の電子制御の安全装置が正しく動作するように調整・校正する作業のことです。

例えば、バンパーには電子制御に関わる多くのセンサーがついています。板金塗装の修理の際にバンパーを外したら、作業が終わりバンパーを戻した後に、エーミングが必要です。

 

2024年10月より法令が改正され「OBD検査」も車検項目の1つとなりました。

OBD検査とは、車載式故障診断装置(OBD)を利用した新たな自動車検査手法です。

国産車は2021年10月1日以降の新型車、輸入車は2022年10月1日以降の新型車は、車検時に必要な検査になります。

板金塗装でパーツ脱着があった場合にエーミングされていないと、車検に合格できなくなります。

 

自動運転などの電子制御対応機能をもつ車を板金塗装修理する場合は、修理工場に聞いてみてくださいね!

 

まとめ

1)板金塗装修理は、板金と塗装の2つの工程がある。

  それぞれの工程はさらに細分化され、10以上の全く違う作業の積み重ねになる。

2)工場ごとに品質の差は存在する。差の理由は設備や技量など様々。

3)「上手くて早くて安い」という品質と納期と価格の全てがパーフェクトなのは難しくても、そのバランスはとることができる。

4)愛車の修理の際は、数多くの工場に、実際に足を運ぶのが最もおススメ!

5)自分の要望を聞いてくれて、複数の提案をしてくる工場が良い。

6)納得いくまで教えてくれて、寄り添ってわかりやすく説明してくれる工場が、最終的には満足できる。

6)保険修理対応の有無、OBD対応の可否も大切な要素の1つ。

 

愛車を直すために、プロの知識を使いながら、親切に聞いて寄り添って説明してくれる工場が、最も満足できるかと思います。

自分に合う工場を見つけて、愛車のキズをなおして、心のキズもいやされてくださいね😊

 

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